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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)4445号 判決 1997年7月14日

原告

宮﨑時江

ほか一名

被告

福永利彦

主文

一  被告は、原告宮﨑時江に対し、金一三六八万一一九一円及びこれに対する平成五年四月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を、原告宮﨑清太郎に対し、金一六五万円及びこれに対する平成五年四月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを六分し、その五を原告らのその余を被告の負担とする。

四  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

1  被告は、原告宮﨑時江に対し、金八七九五万五七三八円及び平成七年六月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告宮﨑清太郎に対し、金二五三万一九八〇円及び平成五年四月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原動機付自転車を運転して交差点を右折中の原告宮﨑時江(以下「原告時江」という。)に、被告運転の普通乗用自動車が衝突し、原告時江が負傷した事故につき、原告時江が、被告に対し民法七〇九条に基づき損害賠償請求するとともに、原告時江の夫である原告宮﨑清太郎(以下「原告清太郎」という。)も被告に対し、民法七〇九条、同七一〇条に基づき固有の慰謝料を請求している事案である。

一  争いのない事実等(証拠によって認定する場合は証拠を示す。)

1  事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 日時 平成五年四月三〇日午前一〇時ころ

(二) 場所 高知県須崎市栄町二番六号先路上(国道五六号線)

(三) 関係車両 原告時江運転の原動機付自転車(須崎市ひ五〇三〇)(以下「原告車両」という。)

被告運転の普通乗用自動車(なにわ三三つ八三二八)(以下「被告車両」という。)

(四) 事故態様 信号機により交通整理の行われていない、国道五六号線に北西方向からの道路(以下「交差道路」という。)が突き当たるT字型交差点(以下「本件交差点」という。)において、交差道路から右折して国道五六号線に進入しようとした原告車両左側に国道五六号線を南西方向に直進してきた被告車両右側前部が衝突した。

2  原告時江の負傷及び治療経過

原告時江は、本件事故により脳幹損傷、外傷性クモ膜下出血、左脛骨・腓骨骨折、左大腿打撲、左下腿開放創、右足挫傷、外傷性ショック、頸椎椎間板ヘルニア等の傷害を負った。

原告時江は、右受傷後、医療法人五月会須崎くろしお病院に入院し、平成六年六月三〇日の症状固定後も右病院にて入院を続け、平成八年一月八日にちひろ病院に転院し、現在も入院中である(弁論の全趣旨)。

3  原告時江の後遺障害

原告時江は、平成六年六月三〇日に症状固定の診断を受け、以下のとおりの後遺障害が残り、自動車保険料率算定会において自動車損害賠償保障法施行令二条後遺障害別等級表一級三号の認定を受けた(甲六、甲七、甲八の一、二)。

(1) 四肢の麻痺及び拘縮があり、上肢は両肘でわずかに随意運動ができるものの下肢は全く動かせない状態であって体位の変換ができない。

(2) 自力での経口摂取は不可能である。

(3) 排泄においては、バルーンカテーテルがなければ失禁状態になり、大便は常に失禁状態である。

(4) 意識及び認識は十分にあるが、構語障害により、単語レベルの意思疎通しかできない。また眼球運動障害があり、複視がある。

4  損害

(一) 症状固定までの治療費 一七一万四二二四円

(二) 症状固定後の治療費 五五万九五七六円(甲一七)

(三) 後遺障害逸失利益 二五二六万二六二五円

(四) 入院慰謝料 三〇八万円

(五) 後遺症診断書等費用 一万〇九一〇円(甲一〇の一ないし六)

5  損害のてん補

原告時江は、損害のてん補として、被告より一一七〇万三三〇三円(内治療費一七一万四二二四円)、自賠責保険より二八九七万円の、計四〇六七万三三〇三円の支払を受けた。

二  争点

1  過失、過失相殺

(原告らの主張)

被告は、業務として普通乗用自動車を運転するものとして、前方の交通状況を注視し、交通信号の表示する信号に従って安全に進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、国道五六号線を高知市方面から中土佐方面へ進行中、公衆電話を探すことに気をとられ、本件事故現場の手前にある交差点の信号機が赤色であることに気づかないまま直進し、さらに原告車両が自車の前方に右折進行してきたのを視認しないで被告車両を原告車両に衝突させた。

さらに被告は、交通事故による損害の拡大を防止するため、被告車両を原告車両に衝突させた後、即座に自車の制御措置を講ずべき注意義務があったにもかかわらずこれを怠り、原告車両と衝突後、漫然、原告時江及び原告車両を被告車両によって押し出す形で約二五・一メートルも引きずって損害を拡大させた。

したがって、被告の過失は重大であり、過失相殺がなされるとしても一五パーセントが妥当である。

(被告の主張)

原告時江は、優先道路である国道五六号線に右折進入するに当たり、左方の安全確認を怠った過失があり、相当の過失相殺がなされるべきである。

2  原告時江の損害(原告の主張)

(一) 近親者付添看護費

(1) 症状固定前日まで 一九一万七〇〇〇円

原告時江は、本件事故後から体位の変換が自力でできず、数分おきに体位を変化させないと昼夜を問わず苦痛を訴え、また床ずれができるためこれが悪くならないようにする必要があり、さらに原告時江は原告清太郎にそばにいてもらうことを常に願っており、病院の看護だけでは不十分であった。そこで、原告時江には近親者である原告清太郎による付添看護が必要であり、その費用は、日額四五〇〇円として、本件事故日から症状固定日の前日までの四二六日間につき一九一万七〇〇〇円が相当である。

(2) 固定日以後の将来分 二三九四万七六五〇円

原告時江の家族は高齢の原告清太郎のみであること、自宅が団地の二階で運ぶのが大変であること、寝たきりの病人用のベットを置く場所もない等、自宅においては原告時江の十分な介護ができないことから原告清太郎はやむなく原告時江を入院させたまま看護することにしたものであり、原告清太郎の付添看護の必要性は症状固定前と変わらない。そこで、症状固定後も原告時江を病院に入院させたまま原告清太郎が付添看護をする必要がある。その費用は日額四五〇〇円として、その三六五日分に症状固定時からの余命二二年の新ホフマン係数一四・五八〇を乗じた、二三九四万七六五〇円が相当である。

(二) 付添実費

(1) 既払分

平成五年五月一日から平成六年一月三一日まで 二七〇万円

平成六年二月一日から平成七年三月三一日まで 三〇〇万円

平成七年四月一日から平成八年三月三一日まで 二一六万円

平成八年四月一日から平成九年一月三一日まで 二〇〇万円

原告時江は、本件事故後から体位の変換が自力でできず、数分おきに体位を変化させないと昼夜を問わず苦痛を訴え、また床ずれができるためこれが悪くならないようにする必要があり、加えておしめやマットを替えたり、洗濯をする等の作業も必要であり、病院による介護だけでは不十分であった。ところが、原告清太郎は現在七〇歳という高齢であり、体力的に独力での付添看護は不可能であった。そこで原告清太郎の外、職業付添人による介護が必要であったものである。

(2) 将来分 二九八一万九〇四〇円

日額六〇〇〇円として、その三六五日分に平成九年二月一日現在の余命二〇年の新ホフマン係数一三・六一六を乗じた額

(三) 入院雑費

(1) 症状固定前日までの分 五五万三八〇〇円

(2) 症状固定後平成九年四月一五日までの分 一〇二万一〇〇〇円

日額一〇〇〇円で一〇二一日分

(四) 休業損害 三四三万一〇五〇円

平成五年度の賃金センサス女子労働者の六〇歳から六四歳までの数額(年額二九四万〇九〇〇円)を基準として一四か月分

(五) 後遺障害慰謝料 二四〇〇万円

(六) 物損 六万三九〇三円

(七) 弁護士費用 一一七九万二〇八四円

3  原告清太郎の損害(原告の主張)

(一) 固有の慰謝料 二七〇万八〇〇〇円

(二) 弁護士費用 二七万〇八〇〇円

なお、原告時江は、右2記載の損害につき、前記一5記載の既払金を遅延損害金から充当すべきである旨主張している。

第三当裁判所の判断

一  争点1(過失、過失相殺)について

1  前記争いのない事実等及び証拠(甲三、甲四、検甲一の一ないし七、乙三、検乙一の一ないし一〇、検乙二の一ないし二七、被告本人)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件事故の現場付近の概況は、別紙図面のとおりである。本件現場は南西方向から北東方向にほぼ直線で延びる国道五六号線に、交差道路が突き当たっている交差点であり、信号機による交通規制はされておらず、国道五六号線の北東行き車線は本件事故現場付近で二車線になるが、南西行き車線は一車線である。また、南西行き車線の最高速度は時速四〇キロメートルに規制されている。交差道路については、車線幅四・九メートルの道路で、国道五六号線にほぼ垂直につき当たっており、国道五六号線が優先道路である。事故当時は晴れており、被告車両からの見通しはよく、交差道路から出てくる車両との間に見通しを妨げるものはなかった。なお、本件事故現場の北東約五八メートルのところには、信号機により交通整理の行われている交差点(以下「信号機のある交差点」という。)がある。

(二) 被告は、本件事故の直前、被告車両を運転して国道五六号線を高知市方面から中土佐町方面に向け時速四〇キロメートルないし五〇キロメートルで走行し、図面<2>の地点にさしかかったところで自車左前方の「ナイトショップいしづち」付近に公衆電話があることを発見した。被告はかねてより公衆電話があれば停止して自宅へ電話しようと考えていたことから、右公衆電話に気を奪われてしまい、自車左前方を見たまま速度を落とすことなく本件交差点を通過しようとした。なお被告は、原告時江と衝突するまで原告時江の存在に全く気づいていない。

(三) 原告時江は、本件事故当時、原告車両を運転して交差道路から国道五六号線に右折進入しようとし、本件交差点の手前で一旦停止して、発進し、加速しつつ国道五六号線に進入しようとした。

(四) 以上の事実を総合すれば、被告には、自車左前方の公衆電話に気を奪われたまま右前方等を注視することなく、漫然本件交差点を通過しようとした過失があることが明らかである。原告らは、被告には右の他に損害拡大防止義務違反の過失があると主張するが、被告車両は衝突後二五・一メートルで停止していることから、被告は衝突後直ちに制動措置を講じていると推認され、かかる過失は認められない。他方原告時江には、本件交差点に進入するにつき、国道五六号線は優先道路なのであるから、安全を十分に確認してから発進すべき義務があるのにこれを怠った過失があるものと認められる。右過失の内容を対比し、前記道路状況、原告時江の年齢(当時六二歳)を考慮すると原告時江の過失割合は五割とするのが相当である。

2(一)  被告は、右認定に反し、被告は信号に従って進行し、図面<2>の地点で公衆電話を発見してから衝突するまでの間公衆電話ばかりを見ていたわけではないと主張しており、被告の右主張に沿う証拠としては被告本人尋問における供述及び被告作成の陳述書(乙三)があるから、その点につき付言しておく。まず、被告は信号機のある交差点において信号機の青を確認した上で走行していたというのであるが、被告は当時公衆電話を探しており道路両側の状況に気をとられていたことが認められる上(乙三、被告本人)、他に被告の対面信号の青を確認した上で走行したとする右供述及び陳述書の内容に符合する証拠は見あたらないことからすれば、被告の前記供述及び陳述書の内容の信用性は低いといわざるをえず、被告の前記供述及び陳述書の内容は採用できない。また、電話を発見してから衝突するまでの間公衆電話ばかりを見ていたわけではないという点についても、衝突するまで原告時江に全く気がつかなかったことは被告自身認めているところ(乙三、被告本人)、右前方等の状況を少しでも注視していれば衝突するまで原告時江に気がつかないということはあり得ないから、被告の前記供述及び陳述書の内容はやはり採用できない。

(二)  被告は、さらに、交差道路の出口から本件衝突地点は七ないし八メートルしかなく、原告時江が交差道路の出口から衝突地点に至る時間は二・五ないし三秒であるから、原告時江が交差道路の出口において左側を見たとすれば、その時には、被告車両は信号機のある交差点よりも本件交差点寄りを走行していたことになり、被告車両を容易に確認できたはずであるが、それにも拘わらず、原告時江が発進したのは左方の確認を怠ったためであると主張する。しかしながら、およそ交差点において右折しようとする者は、左側を確認した後、自車の進行方向である右側を再度確認して自車を発進させていくのが通常であることからすれば、原告時江が交差道路の出口において左側を確認してから本件衝突地点に至るには最低でも五秒程度はかかるものと推認され、二・五ないし三秒しかかからないことを前提とする被告の主張は失当であるというべきである。

したがって、被告の右各主張はいずれも採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

二  争点2(原告時江の損害)について(かっこ内に認定に供した証拠を示す。)

1  近親者付添看護費及び付添実費 四一五万一九〇〇円

(一) 原告時江は事故当時六二歳と高齢である上、本件事故後から体位の変換が自力でできず、数分おきに体位を変化させて床ずれが悪くならないようにする必要があり(甲一五)、さらに原告時江は唯一の家族である原告清太郎にそばにいてもらうことを常に願っていたこと(甲一四)、中村秀香が病院に泊まり込んで原告時江の世話をしたが病院からは特に問題にされなかった(甲一四)といった事情が認められるほか、証拠(甲九、甲九の二、甲一四、甲一五)及び弁論の全趣旨によれば、原告清太郎は本件事故以降現に原告時江の付添看護をし、また平成五年五月一日以降平成九年一月三一日まで中村秀香らが原告清太郎の依頼により原告時江の付添看護をして、合計九八六万円を受領した事実を認めることができる。

(二) そして原告清太郎は本件事故当時既に六七歳であり実質的に付添看護を行うことは不可能(甲一五、弁論の全趣旨)と認められる事情、付添看護の内容、付添看護をしてきた者が原告時江の幼なじみであったという事情(甲一四)、現時点での入院治療の内容(甲八の二)からみて将来原告時江が退院を求められる可能性も十分に考えられるところ、仮に退院せざるを得なくなれば、看護に非常な困難を来すことになると予想される事情(弁論の全趣旨)、原告時江の年齢、受傷内容その他の事情を考慮し、症状固定日前日までは一日当たり一万円、それ以降は一日当たり七〇〇〇円を本件事故との相当因果関係のある損害と認める。従って、症状固定前日までの分については右一万円に症状固定前日までの日数四二六日を乗じた四二六万円が相当であり、それ以降の分については、症状固定日当時六三歳である女性の平均余命が二二年であることは当裁判所に顕著な事実であるから、右七〇〇〇円に一年三六五日及び二二年の新ホフマン係数一四・五八〇を乗じた三七二五万一九〇〇円が相当であり、以上より本件事故と相当因果関係のある付添実費は四一五一万一九〇〇円であると認める。

2  入院雑費 一五七万四八〇〇円

(一) 症状固定前日までの分 五五万三八〇〇円

症状固定日前日までの入院雑費については、一日当たり一三〇〇円が相当であると認められるから、右一三〇〇円に症状固定日までの日数である四二六日を乗じた額が本件事故と相当因果関係のある損害である。

(二) 症状固定日以後平成九年四月一五日までの分 一〇二万一〇〇〇円

症状固定日以後の入院雑費については、原告時江の入院状況等本件に顕れた一切の事情を考慮すると一日当たり一〇〇〇円が相当であると認められるから、右金額に症状固定日から平成九年四月一五日までの日数一〇二一日を乗じた額が本件事故と相当因果関係のある損害であると認められる。

3  休業損害 三四三万一〇五〇円

原告時江が本件事故当時パートとして稼働し、かつ主婦として稼働していたことは弁論の全趣旨から認められるので、本件事故と相当因果関係のある損害は、平成五年度の賃金センサス女子労働者の六〇歳から六四歳の数額(年額二九四万〇九〇〇円)を基準として一四か月分である右金額であると認められる。

4  後遺障害慰謝料 二九〇〇万円

本件事故によって原告時江に残った後遺障害の程度、付添看護の内容等本件弁論に顕れた一切の事情を考慮して、右金額をもって相当と認める。

なお、原告時江の請求する慰謝料額よりも高額の慰謝料を認容することになっても、同一の身体傷害を理由とする全損害について裁判所が認容する額がこれを理由として原告が請求する額の範囲内にある限り、これを構成する一損害項目である慰謝料額如何は、いわゆる弁論主義の適用を受けないと解されるから、弁論主義違反にはならないことは当然である。

5  物損 六万三九〇三円

本件事故によって原告車両は全損となったと認められる(検甲二の一ないし九)。そして原告車両の購入金額は一三万八〇二〇円であり、事故当時五三・七パーセントの減価償却がされていたと認めるのが相当である(甲一二の一、二)から、右金額をもって相当と認める。

7  小括(原告時江の損害についてのまとめ)

(一) 以上争いのない事実及び当裁判所の認定した事実によれば、原告時江の受けた損害は、一億〇六二〇万八九八八円と認められ、前認定の過失割合五割を控除すると、てん補されるべき原告時江の損害額は五三一〇万四四九四円となる。このうち物損部分を除く五三〇七万二五四三円から前記の自賠責保険からの給付額を控除し、残額である二四一〇万二五四三円に物損部分三万一九五一円を加え、さらに前記の原告時江が被告から支払を受けた金員を控除すると、一二四三万一一九一円となる。

(二) てん補金の充当関係について

ところで、原告時江は、損害のてん補として受領した金員は、損害賠償金を元本とし、本件事故時を起算点として発生している遅延損害金から充当するべきである旨を主張する。たしかに不法行為に基づく損害賠償債務は何らの催告を要することなく、不法行為時から遅滞に陥ると解されているところではあるが、損害賠償額は、本来的に蓋然的なものであるうえ、種々の評価を経てはじめて算定されるものであり、遅延損害金発生時において元本が客観的かつ具体的に確定している貸金や売買代金とはその性質を異にするものであること、これまでの裁判例のほとんどが右の原告主張のような扱いをしておらず、損害のてん補として支払われた金員は元本から充当することが実務上の慣行になっているといえるに加え、殊に本件においては、後遺障害慰謝料の算定につき、通常の場合に比べ増額していることなどに照らすと、損害のてん補額を裁判所が算定した元本である損害額から控除すれば足りると解するのが相当であり、結局原告時江の右主張は採用できない。

遅延損害金の発生時期について、原告時江は、訴状においては平成七年六月二三日から請求しているが、原告時江は、黙示的に、裁判所において損害のてん補金について原告時江主張のような扱いをしないときには、事故発生時からの遅延損害金を請求しているものと解するのが相当であるから、事故発生時からの遅延損害金を認容することとする。

(三) 弁護士費用 一二五万円

原告時江が本件訴訟を遂行するに際して弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、右認容金額その他本件に顕れた事情を考慮すれば、原告時江の弁護士費用は一二五万円をもって相当と認める。

三  争点3(原告清太郎の損害)について

固有の慰謝料 一五〇万円

原告時江の受傷及び後遺障害の程度、原告時江は原告清太郎にとって唯一の同居している家族であったこと、本件事故の状況(原告時江の過失を含む。)本件事故によって原告清太郎が受けた心痛等本件弁論に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告清太郎の固有の慰謝料は一五〇万円をもって相当と認める。

そして、原告清太郎が本件訴訟を遂行するに際して弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、右認容金額その他本件弁論に顕れた事情を考慮すれば、原告清太郎の弁護士費用は一五万円をもって相当と認める。

第四結論

以上のとおりであるから、原告時江の請求は金一三六八万一一九一円及びこれに対する平成五年四月三〇日から年五分の割合による遅延損害金、原告清太郎の請求は金一六五万円及びこれに対する平成五年四月三〇日から年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 松本信弘 山口浩司 大須賀寛之)

交通事故現場見取図

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